約 3,758,715 件
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1739.html
あの時、佐助の忠告に従っておけばよかったのだ。 呆然と横たわったまま慶次は思ったが、あの会話の時点で慶次は自分の心持ちをよくわかっていなかったのだ。 汗で張り付いた前髪が気持ち悪い、そう思えば心を読んだかのように硬い指が慣れた動きで前髪をかき上げた。 「…もっと、楽にせよ」 無理だ。 またも慶次の思考が読まれたのか、ざらついた声が続ける。 「まずゆっくりと息を吸うとよい。吸ったなら、細く少しずつ吐きだせ。ああ、俺の肩に掴まれば楽になろう」 聞き分けのない子供に言い聞かせるように慶次に語りかける幸村の瞳は恐ろしく澄み切って、美しい。 言われるままに呼吸をし、幸村の肩にすがる慶次の様子を冷静に見ながら、豊かに弾む乳房を揉みしだき、押しつけた腰を回す。 苦痛に強張るばかりだった慶次の肉体を慣れた動きと冷静な観察であっと言う間に溶かし、幸村のいいように変えていく。 ぐちぐちと濡れた音は破瓜のせいだけではない。 (ああ、あんたは正しかったよ、恋をした女の忠告は聞くべきだったんだ) 破廉恥と、凛々しい顔立ちを赤く染めたのは確かに今慶次の上にいる男だ。 「…っ…あう…」 「まだだ、慶次殿。すべて入っておらぬ」 「うそ…もう無理だってば…」 「平気だ。俺に任せてくだされば」 ゆっくりと、幸村の顔が下りてくる。 だらしなく唾液に塗れた慶次の口元を、幸村は丁寧に舐めている。 犬のような男だとからかったのは、いつだったか。 (あんたの言う通りだよ) 慶次は、本当の恋を知らなかったのだ。 「はは…ほんとだよさっちゃん」 「なにか?」 「幸村、俺はあんたを舐めてたよ。恋って、破廉恥なものなんだな」 「左様。なればあまり吹聴なさるな」 赤い虎の若子が、妬けては困る。 嘯く口はしばし笑い、やがてゆっくりと重なり合った。 了
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/87.html
863 :聖王一味、地球へいく:2008/05/27(火) 01 40 47 ID kXOqvVrq なんか書けたのを投下します。 「ジャックされていた次元航行艦、撃沈確認。脱出する機影―――ありません」 その声が艦内に響くとクラウディア艦内は安堵と達成感による歓声に包まれる。 十数隻にも及ぶ時空管理局次元航行艦隊に追い詰められた逃亡者の船は 数度に渡る停船命令を黙殺し、ついには艦隊主砲の一斉射によって宇宙の藻屑と化した。 艦長席でその消え去りゆく艦影を眺めながらクロノ・ハラオウンは嘆息する。 「…終わったのか」 ゆりかごと呼ばれた古代の戦船による絶望的な一撃、そしてその後の軌道上での熾烈な艦隊戦により ミッドは未曾有の惨禍を被り、多くの人間が命を散らした。 その中には彼にとって認めるのが辛い、名も少なからず存在した。 ……それから一年、ゆりかご陥落後、各地へ逃亡していた スカリエッティ一味の最後の一人を殺し 形は最良ではなくとも 今こうして一連の事件は一つの解決を見た――かに見えた。 「いや、まだだ、あの女の能力がある。映像に映らないなら生体反応も含めて索敵を続けろ」 クロノの一声に艦内に緊張感が戻る。 「しかし、宇宙空間ですよ?」 「あの女にはあの娘もついているんだ。あの娘は何をしでかすかわからないぞ。 目の前の星に逃げ込まれると厄介なことになる、急ぐんだ」 副官の言葉に顔も向けずに淡々と命令を下す。 (それにしても、決着の場がこの星の側なるとはな。第97管理外世界―地球…か) クロノはこの星出身だった懐かしい顔ぶれを思いだし、自嘲的に笑った。 「きょ、今日という日はやるのよ。だって私は冬木の虎、今宵、この竹刀は血に飢えておる!」 「大河、久し振りに手合わせをしませんか?」 「きゃあああーーー!!?」 「ど、どうしたんです!?大河」 背後から現れたセイバーに大河は悲鳴をあげる。 「セイバーちゃんはダメよぉ。まるで人外だし。私はこの悪魔っ子二号を今日こそ抹殺するの」 大河が竹刀で指した先には関心なさそうに茶をすするカレン・オルテンシアの姿。 「ずず、衛宮士郎、この騒がしい珍獣はなんとかならないのですか? 飼い主としての見識を疑うところですね」 しれっと涼しい顔からは想像しずらい毒に苦笑いというか顔をひきつらせる士郎。 この面子で住むようになって幾日がたっただろうか。 連日、家のあちこちで起きるささいな衝突に正義の味方の心は磨耗し始めていた。 864 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01 42 59 ID SSAKpBeH 契約・魔法生物関係はルールブレイカー。 使用魔法にはゲイ・ジャルグが天敵だな。 そして支援 865 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01 45 46 ID kXOqvVrq その夜、空に光が溢れ異様な空気を現出していた。 「セイバー、どう思う?テレビでも原因は不明って言ってるけど」 「私にも、わかりません。が、悪い予感がします、気をつけてください。 そういえばバゼットはどうしていますか?」 「バイト疲れが出たのかもう寝てるわ」 「この事態に寝ているとは、弛みすぎだ」 空の異変は国の異変。古き星読みを知るセイバーは今起きていることを 相当深刻に受け止めていた。優れた戦士だと思っていたバゼットに失望を禁じ得ない。 その言葉は重く王の威厳を備えていた。その言葉を聞いた凛はただ一言。 「セイバー、ほっぺにクリーム付いてるわよ…」 866 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01 46 47 ID kXOqvVrq 衛宮士郎は鍛錬を怠らない。投影魔術こそが本領と知ってからは 投影こそがこの土蔵で衛宮士郎が行う魔術。 「――――投影、開始」 その始まりの呪文を紡ぐ。だが、足りない、近頃は足りない。 あるいは、足りている。 「カレン、士郎はまた?」 「ええ、あの、匂いが立ち込めそうな土蔵で1人、行為に没頭しているわ」 「あんた…そういう言い方いい加減やめなさいよ…」 「――――基本骨子、想定」 そう、想定は済んでいる、あの男は妄想の中で勝てと言ったか、 激しい衝撃と裂ける爆音とを連れて 土蔵の天井を突き破り何かが落下して来た。 それは士郎の前に立つ。 「おおおお!?」 「こ、ここは地球?」 それは声を発する。弱々しい衰弱した声は若い少女のものだった。 濃紺のスーツに身を包み、輝く金髪の髪、左右違う瞳が印象的な少女。 「あ、うん。地球だ」 「よかっ…た…」 士郎の気の抜けた答えを聞くと緊張が解けたのか足から力が抜け士郎へと倒れ掛かる。 「お、おい!?」 体を預けてくる相手を受け止めた。そうしてどうするか思案していると当然家人がやってくる。 「士郎!大丈夫!?投影が失敗でもした!?」 「衛宮士郎、生きてますか?」 「ああ、それより…」 「…あんた…まさか、その子」 「まさに駄犬…」 士郎を見た家人の反応は冷たかった… 867 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01 49 27 ID kXOqvVrq 士郎に対する誤解はすぐに解けた。何故なら、士郎に抱きしめられている少女の他に 血だらけになりながら凛達を品定めするような視線で見ている女がいたから。 両手に五歳程に見える眠った少年を大事そうに抱えながら。 「あっ…ぐぅ…」 少女同様濃紺のスーツを纏った長髪の女は苦しそうに膝をつく。 「ちょっと、あなた酷い怪我じゃない!」 凛の指摘通り女は少年を抱えた手の周囲を除いて全身大小様々な破片が突き刺さっていた。 凛が駆け寄ろうとすると、どこにそんな力があったのか 膝立ちの姿勢から瞬時に体を起こし後方へ飛び距離を置く。 けれどその程度の負荷にもすでに耐えられない体だったのか 次の瞬間、大量の吐血と同時に両足が壊れた。 文字通り機械的に壊れた。 土蔵の底に体が投げ出される。 「がっ……」 「カレン、この子任せた!」 士郎は気を失っている子をカレンに預けると女に駆け寄った。 「大丈夫か、あんた?遠坂、なんとかならないか?」 「ごめん、今宝石持ってきてないわ」 士郎達が自分を助けようとしていると理解した女は…笑った。 「あっはは、まさかこの私を助けようなんてお馬鹿さんが…いるなんてねぇ。 本当にこの世は…馬鹿…ばっか…りだわぁ」 笑った。涙を流して。 「でも…ん、残念…時間切れ…私は死ぬ…わ…ごめんな…さい…ねぇ」 出血は止まらない。何かの放電も止まらない。 「あんた…」 「…最…後に頼ま…れてく…れるか…し…ら?」 「その子のことだろ」 女が死に際して未だ大事そうに抱く子。頼みとすればそれしかない。 その子は女の腕の中安らかな呼吸をしていた。 「ふふ…ふ、か…わいい…わ…ドク…タ」 士郎がその子を受け取ると女は役目は終わったとばかりに静かに息を引き取った。 その日、衛宮士郎一児の父になる…かもしれない。 868 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 01 51 29 ID kXOqvVrq 終わります。短くてすいません。 869 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 02 00 39 ID VF5aPSpg クアットロの子引き取るんかい 870 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 02 02 12 ID W7VIKdyX 864 この2つの宝具を心眼で士郎が使いこなしたら、 魔導師(ミッド式)or使い魔に対して完璧反則だな・・・ 支援です 871 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 05 47 42 ID kXOqvVrq 一部抜けてたんで再投下失礼します。 衛宮士郎は鍛錬を怠らない。投影魔術こそが本領と知ってからは 投影こそがこの土蔵で衛宮士郎が行う魔術。 「――――投影、開始」 その始まりの呪文を紡ぐ。だが、足りない、近頃は足りない。 あるいは、足りている。 「カレン、士郎はまた?」 「ええ、あの、匂いが立ち込めそうな土蔵で1人、行為に没頭しているわ」 「あんた…そういう言い方いい加減やめなさいよ…」 「――――基本骨子、想定」 そう、想定は済んでいる、あの男は妄想の中で勝てと言ったか、 今の生活において妄想せずに済む日などない。 ならば、こと妄想に関して衛宮士郎が負けるなんてことは有り得ない。 「――――仮定完りょ…って俺は何を…」 自分が成そうとしていたことに恐怖する。 「疲れて…いるのか?」 そんな士郎の声に呼応するかのように激しい衝撃と裂ける爆音とを連れて 土蔵の天井を突き破り何かが落下して来た。 それは士郎の前に立つ。 「おおおお!?」 「こ、ここは地球?」 それは声を発する。弱々しい衰弱した声は若い少女のものだった。 濃紺のスーツに身を包み、輝く金髪の髪、左右違う瞳が印象的な少女。 「あ、うん。地球だ」 「よかっ…た…」 士郎の気の抜けた答えを聞くと緊張が解けたのか足から力が抜け士郎へと倒れ掛かる。 「お、おい!?」 体を預けてくる相手を受け止めた。そうしてどうするか思案していると当然家人がやってくる。 「士郎!大丈夫!?投影が失敗でもした!?」 「衛宮士郎、生きてますか?」 「ああ、それより…」 「…あんた…まさか、その子」 「まさに駄犬…」 士郎を見た家人の反応は冷たかった… 872 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/27(火) 07 12 38 ID fw/kuh0I 871 投下乙でしたー 脳裏に『スカリエッティ育成ゲーム“Professor Maker”(略してプロメ)』なんて語が浮かんだのは秘密だ 870 その幻想は世に出さない方がよさそうな気がする……気のせいかしら
https://w.atwiki.jp/wolfpedia/pages/56.html
笑っていいとものテレフォンショッキングのゲストに少しでもハロプロと関わりのある人が登場したときに その人→ハロメン→ごっちん と巡って、あさってのいいともにごっちんがゲストに呼ばれると妄想する後藤真希を描くネタスレ 11 名前 名無し募集中。。。 ノノハヽ ドキドキ ( ´ Д `) _ (つ¶と) l\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ |\\ . \ . !__l\l二二二二二二二二二二l | | | |. ____ !__l !__l . |\___\ | |r―――t| . | ||= =|| |l\||=:@:=|| |l || ̄ ̄ ̄ ̄|| \||____||~ 26 名前 名無し募集中。。。 | ||\ | ||☆\ | || * o|\  ̄|| ̄ ̄|| ワクワク | || ゚ |☆\ || || ______|__ || ☆ | * o || □||□ || |._. ._. ._. ノノノハヽ | \ ゚ | ゚ || || || |\ _ (*´ Д `)\ \ | ☆ || _||__|| | |\__∪ ̄∪ ̄ ̄\ \ o|| 二0二二|| ̄\|∫\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ \|| \ヾ \ \ \ ||~~~~~~~~~~~~~~|| だいたいの場合は、ごっちんはおろか次にハロメンすら紹介されないことがほとんどなので、ごっちんは拗ねてしまう 500 名前 名無し募集中。。。 プルルルル… ノノノハヽ ∩;` Д ´;) □………(つ )  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ガチャ はいこちら吉澤です ノノノハヽ ∩;` Д ´;) □………(つ )  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /| \_WW/ |WWWWWWWWWWWWW/ ≫ ≪ ≫ いいぽもーーーーーー!!!≪ ≫ ≪ /MMMMMMMMMMMMMMMMM、\ ガチャコーーン ・.゜ ノノハヽヽ \从/ ( Д ´; ) □≡=- ミ )  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 507 名前 名無し募集中。。。 500 ノノノハヽ ∩;´~`○)<・・・? □………(つ )  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 実際は… 後藤のいいとも出演は二度ある。ハロメンからの紹介で後藤が出演した回は モーニング娘。(高橋・藤本)から紹介された2003年3月10日の回のみ。 タグ AA スレッド ネタスレ 後藤真希 からオシャレで清楚な上質な女の子が素敵な夜をお届け致します(*´д`)ノ http //www.fgn.asia/ -- えりか (2012-07-01 10 55 41) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2430.html
俺は立っていた。 全身を血に染まらせて。 足下に転がる三好の三人に、既に意識はなかった。 流れ出る鮮血が、渡り廊下一面を覆い尽くし、ぽたぽたと滴り落ちては地を汚していた。 死ぬつもりであった。 だが、その絶望を上回る程の、絶対の怒りが全身に渦巻いていた。 許さない。許せない。こいつらだけは。 荒い息も整わぬまま、俺は一直線に奴の部屋へ向かっていた。 勢い良く障子戸を開けると、こちらに背を向けていた久秀は、別段慌てた風もなく、ゆっくりとした動作でこちらへ向き直った。 「松永久秀ぇぇぇッッ!!!」 奮い起こす様に、怒気をあらんかぎりの叫びに乗せ、それと共に俺は床を蹴った。 ただ命を奪う為だけに、刀を両手に持ち替え、体重を掛けて突する。 そして、全ての音が消えた。 手にした刀は、何の抵抗もなく深々と久秀に突き刺さっていた。 一瞬遅れて踊る様に湧き出た血が、刀を持つ俺の手を染め上げる。 「何故だ……」 声を上げたのは俺だった。 「何故避けなかった……!」 俺の声だけが部屋に響き渡った。 「何故……だろうな」 少し間の開いた後、久秀は自嘲気味に口の端を上げた。 「俺を利用する為だけに側に置いていたのだろう!?」 思わず声を荒げて食い掛かる。 「利用するだけ利用して、腹の内で嘲笑っていたのだろう!?違うのか!?」 襟元を締め上げても尚、久秀は何も言わずに目を細めていた。 「返せ……返してくれ……!お館様を!佐助を!武田を……!!」 力任せに揺さぶれば、久秀はがくがくと力なく揺れた。 それ以上の言葉が、溢れ出た涙に遮られる。 返せと喚いて、返ってくるものではない事も分かっていた。 返せと言う事自体が間違っている事も分かっていた。 奪ったのは俺自身に他ならないのだから。 いつしか俺は、憎い筈の男に縋る様に泣いていた。 成す術のない赤子の様に、泣きじゃくっていた。 久秀は身動き一つせず、血の流れ出る腹を押さえたまま、ただ、ぼんやりと虚を見つめていた。 「……遅かったな」 ぽつりと呟いた久秀の言葉が、俺の背後に立つ人物に向けられたものだと気付くのに数刻要った。 それ程に、俺の死角を取った人物は、全くと言って良い程気配を感じられなかった。 慌てて振り向き様構えようとしたその手が、あっけなく後ろ手に捉えられる。 続いて流れるような動きで、もう片方の手が俺の視界を塞いだ。 一寸の油断を悔やんだ後、だがその掌の温かさに懐かしさを覚え、俺は動きを止めた。 「誰かさんのお陰で身動き出来ない程重傷だったもんでね」 聞き覚えのある軽い口調は、紛れもなくその男の声だった。 「佐助……?」 止めどなく溢れ出た涙が、俺の顔を覆うその掌を濡らしていく。 懐刀が俺の手を滑り落ち、かららんと無機質に床に転がった。 月に群雲8
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/877.html
くちゅ…くちゅ…くちゅ… 自分の体から発せられる淫らな水音が静かな部屋に響く。 目を閉じるとその音は余計に耳に響き神経がまた高ぶる。 裸の二人。 甘い吐息が私の頬を撫で、ラブの顔が迫ってくるのがわかる。 「あっラブ!もうイッちゃう!早くキスして!」 いつもの様にラブの指で絶頂に達しようとした寸前、 スッとラブが私の中から指を抜いた。 吐息も去り、キスもお預け…。 んっ…もう意地悪…。 潤んだ目を開けてラブの顔を覗く。 「せつな…今日はいいものがあるんだ。 使ってみてもいい?」 私の視線を避けた気まずそうなラブの表情に嫌な予感。 「えっ…なに…?」 「これ…」 ラブがベッドの下に置いてあった紙袋からゴソゴソ何か取り出した。 これって… 「もっとせつなのエッチな姿が見てみたいんだ…嫌?」 心臓が止まりそうだった。 ど、ど、ど、何処でこんなもの?! 双方に同じものを型どった…本物の肉体の様な… シリコンの……? 作りものだけど…これって… 男の子の…でしょ…? 「…いいわよ」 頭はパニック状態なのに何故か自然と了承の言葉が出た。 …いいわ。ラブが望むのなら何でもしてあげる。 でも―― 体の快感より、ラブの指、ラブの一部が自分の体と繋がる事が何より幸せで心が満たされる。 たかが作り物でも男の子の“ソレ”が私の中に入るのはラブは嫌じゃないの? 単に興味本位なだけ? ……こんなもの入るの……? 「いれるよ…」 ラブ、何だか目が冷たいわ。 頭は更にパニック。怖い。 そんな私にためらう間もなく、 もう入り口にソレはあてがわれズリズリと入ってくる。 「ーーーッッ!!」 涙が出た。 引き裂かれる様な鋭い痛みが奥からズンと突き上がってくる。 恥ずかしいほどこんなに濡らして、 さっきまでラブの指を吸い付く様に欲し貪欲に快楽を生み出していた場所と同じとは思えない。 ーー痛い。 「痛い?大丈夫? 辞める?」 私を気遣う不安そうな声。 怖くて目は開けられないけど、真っ暗闇の中にいつもの優しいラブの声が響き安心して体の力が抜けた。 「んっ…大丈夫よ…続けて…」 「凄く綺麗だよせつな…」 優しく髪を撫でられ、ラブの舌が私の唇を這いながらその中を割って押し込まれてくる。 入ってきたラブの舌を歓迎するように優しく吸う。 ラブ…愛してるわ。 下腹部がまた熱くなり密がじわりと垂れていくのがわかる。 痛みは次第に鈍く変化し奥からじわじわと快感が生まれてきた。 人間の体は不思議。 …本来男性器を受け入れる様に出来てるもの当然か。 そう思うと心に少し虚しさが広がった。 「あぁーっ!!」 その思いを打ち砕くように突然激しい快感の波が襲ってきた。 初めて味わう感覚。 腟の中を次々と熱い快感の波が風船の様に膨みながら突き上がってくる。 ――凄い。 もっと、もっと奥まで欲しい。 「せつな…慣れてきたみたいだね、奥まで挿れるよ」 ラブは右手でソレを膣の深くにネジこんできた。 ちょうど半分の長さまで入ると、中で上下させソレを握り締めた手が私の突起にわざと擦れる様に動かしてくる。 舌で乳首を押し付けながら円を描くように舐められ、 もうひとつの乳首は左手でくりくりと摘まれる。 強烈な全身の快感に腟の奥がまた熱を上げ疼き、密は止めどなく体外へと溢れ、理性が遠退き我を忘れて泣き叫ぶ様に喘ぐ。 「あああーっ!すごいっいいっ!ダメぇ!ダメょ!あぁ!ラブ!ラブっ!!!」 「ねぇ…せつな… せつなの中に入ってるの、男の子のだよ?」 ラブの冷たい声が耳の奥に響き殴られた様に理性が戻された。 「男の子とするのってこんな感じなんだよきっと。 多分もっと気持ちいいのかな…。 もうあたしの指なんかじゃ物足りなくなるんじゃない?」 そう言ってわざと音がよく響く様にドロドロに密の滴った穴に深く出し入れし掻き回す。 「馬鹿…そんなこと!あぁんっ!」 「ホントにエッチな体だね。こんなに濡らして、すっごい締め付けてるのもわかるよ。…ねぇ男の子とエッチしてるとこ想像してみてよ。 誰でもいいよ? ウエスターでもサウラーでも。 あ、大輔とかは? ふふっ。 意外と興奮したりし」 「何でそんな…! 何でそんな酷いこと言うの!?私はラブしか嫌なのに!もう嫌っ!」 体の快感も痛みもスーッと氷の様に冷たく退き、変わりに恥ずかしさと虚しさで胸が締め付けられ勝手に涙が溢れた。 突然ラブの体が私へ崩れ落ちる様に降ってきて激しく抱きしめられた。 首筋にラブの涙が当たる。 「ごめんねっせつなっ!せつな凄くモテるからいつも不安と嫉妬だらけでもう頭がおかしくなりそうなんだ! いつか男の子に抱かれたらやっぱり男の子のほうがいいって、そしたらあたし捨てられるのかなって …ぅ、うぇ~ん」 「馬鹿ねラブ…そんな事!絶対しないわ!」 本当に馬鹿な子。 ホッとして私もまた涙が溢れた。 ラブの体をひき離し涙でグシャグシャになったラブの顔に頬擦りする。 「あたしがしたいのは一生ラブ一人だけよ。もう泣かないで」 「うわ~ん!せつなぁぁ~!」 ぐずり泣きした子供の様な顔に、いつものラブの愛くるしい笑顔がふわっと戻る。 ホントに素直で単純ね。ふふっ大好きよラブ。 「ねぇ…さっきせつなが男の子とエッチしてるの想像して狂いそうなほど嫉妬してるのに物凄く興奮してたんだ。 あたし変かな…?」 質問には答えずラブの下腹部に手を伸ばす。 ぐぢょりといやらしく音を立てた。 「んっ!!」 驚いたラブは真っ赤になって顔を背けた。 「……ねぇラブ、 その…これ、両端の先端が同じ形になってるって事は私に入れたままラブの中にも入るわよね? 最初からそのつもりだったんでしょ?」 「えっ!いやっ!そんなこと…」 モジモジするラブを今度は私がベッドに押し倒し、 私と半分繋がったままのソレを手で支え、反対側の先端をラブの入り口にあてがう。 ぬちゅっと音を立ててラブの中に抵抗なく吸い込まれていく。 「あああん!凄いよせつなっ!!」 残り半分のソレはすっぽりとラブの中に収まり、ラブの秘肉と私の秘肉が真ん中でぶつかった。 ぐぢょり。 指でラブの突起と自分の突起をプクッと剥き出して、 小さな突起同士がピタリと擦り合わさる様に腰を落とし前後させると突起と膣が同時に刺激されビリビリと今まで以上の物凄い快感が体中を走った。 「いやぁぁ!!せつなぁ!これやばいよぉ!」 「ラブ…ねぇ、一人でコレ挿れて遊んでたんでしょ? こんな…っ すぐに気持ち良さそうにして…ん?」 「あんっ ちがぁっ違うよぉっ ああああっ!ダメだよせつな!動かないでぇっ!」 甘い声を出し、顔を手で覆い初々しく恥じらうラブ。 滅多に見せてくれない快感に耐える可愛い姿…。 もっと魅せて。 興奮して余計に腰が止まらない。 「ラブこそ本当は男の子とエッチしてみたかったんじゃない? 厭らしい子ね。 ねぇ…もっと突いて欲しかったら腰を上げなさいよ!」 自分の顔を覆ってたラブの両手が急に上に伸び、私の腰をガッチリ掴んだ。 「もぉ~!せつなのばかぁ!お仕置き!」 ズチュッ!ズチュッ!ズチュッ! ラブは突き上げた腰を激しく上下に振る。 下から深く突き上げられる度に熔けた熱を帯びた快感が突き刺さる。 「やああああぁ!!」 思わず腰を浮かそうとするが、凄い力で腰を掴まれているからこの快感からの逃げ場はない。 うぅ…私が上でも結局ラブに主導権はとられるのね。 グチュグチュと部屋に響く淫らな水音は勢いを増し、媚薬の様に益々心を狂わせる。 もう爆発寸前。 ――ラブ!お願い! 早く!早くちょうだい! 「ラ、ラブ!もうっ!ダメ!ダメ! イッちゃうーっ!お願いキスして!!」 ラブにのし掛かる様に激しく抱き付き、全身の肌が擦れあい舌と舌が絡まった瞬間、 膣の中で膨れ上がっていた熱いものが爆発し、 寸前で焦らされ続けた快感の渦が一気に解放され洪水の様に蜜が体外に吹き出した。 はぁ…はぁ…はぁ… 凄いことしちゃったわ…… もはや意味を為さない程ズブ濡れたシーツの上に向かいあって転がった。 「ねぇ…ラブ、どうやって、あれ…手にいれたの? どして?」 ラブは少しうつ向いてまたモジモジしてから満面の笑みで顔を上げた。 「言っわな~い!」 ムッとして私は無言でラブに背を向けた。 「わわっ!ごめんごめん!じょ、冗談だって!それはまた詳しく説明するけど、もうこれは今捨てる。やっぱさ、お互いの体だけでせつなと愛しあって幸せゲットしたいもん!」 そう言ってラブは後ろから抱き締めてくれた。 「え?私はまた使いたいわよ。ハマっちゃったわ」 「えぇ!そんなぁ~!」 もう、本当に騙されやすいんだから。 ラブに気付かれない様に笑いを必死に堪えた。 こんなに愛しい貴女以外、私が他に何を欲しがるっていうの? ―ラブ愛してるわ。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1341.html
竹林の奥に、ひっそりと佇む、月から幻想郷へと移り住んだ者達が住む永楽亭。 その地下には、和風の屋敷には不釣り合いな内装の研究室がある。その部屋の中で机に座った、看護師のような服を着た銀髪の美し い女性が片肘を突きながらガラスケースに入った何かを見つめていた。 「おねえさん!おめめがいたいよ!おうちかえる!」 大きめのガラスケースに入っているのは、今や幻想郷でお馴染みとなった。ゆっくりれいむだった。 しかし、何やら様子がおかしい。 「なにもみえないよ!」 ゆっくりれいむの両の眼球には、手術用のメスが深々と突き刺さっており。その眼からは、涙と餡子が混ざった液体が流れている。 ガラスケースの中には、その液体が飛び散った跡があり、ゆっくりれいむが痛みで暴れていた痕跡が窺える。 「あらあら、何も見えないのね?それじゃあ、お友達の姿も見えないし、お花見もできないわね?」 微笑みながら、ゆっくりれいむに語りかける銀髪の女性は、“月の頭脳”こと、八意永琳だ。 「ゆっくりできないよ!」 体を左右に揺らしながら訴えるゆっくり霊夢。 「うふふ、私はとってもゆっくりしてるわよ?」 ニコリっとする永琳。その優しい笑顔で何人の男性を虜にしてきたのか。 「ゆっくりさせてよーっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむちゃん、安心して?私はお医者さんなのよ?こっちにいらっしゃい?あなたのお目々を治してあげるわ。」 永琳がそう言うと、少し間をもった後、ゆっくりれいむは声のする前方へ恐る恐る向かう。 ゴツッ 「ゆ゛ぐぅぅぅううぅぅっ!!!」 しかし、ゆっくりれいむの前には当然、ガラスケースの面が立ちはだかっている。両目のメスはより深く突き刺ささる。 実は、こんなやり取りがもう五回程続いている。 激痛に泣き叫ぶゆっくりれいむ。 「あら、ごめんなさい。ケースの扉を開けるのを忘れていたわ。ほら、もうこっちに来れるわよ。」 もちろん、そんな扉は無い。 「もうやだ!おばさんはうそつきだよ!!!」 さすがに知能の低いゆっくりでも、こう何度も騙されていたら少しは学習するようだ。 しかし、ゆっくりれいむがせめてもの抵抗で発した。その単語がいけなかった。 「お・ば・さ・ん…?」 突如、八意永琳の顔が豹変した。顎を思いっきり横にずらしながら歯ぎしりし、眉毛は釣り上がり、目線は斜め上に向かっている。 顔中にシワが走り、血管が浮き出る。 「だ・れ・が、おばさんじゃこのちくしょうがあああぁあああぁあぁぁぁっ!」 永琳は凄まじい勢いで席を立つと、棚から濃硫酸の入ったビンを取り出し、すぐさま元の席にかけ戻り、ゆっくりれいむの 入ったガラスケースの上部の扉を開け、ドボドボと濃硫酸をそそぎ込んだ。 「ゆぅーーーっ!!!」 どんどん溶けていく、ゆっくりれいむ。 「わしはまだまだティーンエイジャーじゃああああああっ!!!」 発狂しながら濃硫酸を注ぎ続ける永琳。 「ゆっくりゆるしてね!ゆっくりゆるしてね!」 必死に命乞いをするゆっくりれいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ……。」 しかし、ゆっくりれいむはドロドロの液体になり、ガラスケースには饅頭のジュースが出来上がった。 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ……。」 肩で息をしながら、我にかえる八意永琳。 「あらいやだ、もっと時間をかけて楽しむつもりだったのに……。うどんげっ!うどんげっ!!」 「はい!何ですか師匠!!」 八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋へと駆けつける。 「このドロドロの汚いの、皿に分けて隣の部屋のゆっくりどもの餌にしておいてちょうだい。」 「はい!師匠!」 ガラスケースを抱え上げ、部屋を後にするうどんげ。 「…!」 ふと、あることに気づく八意永琳。 「あらあら…私ったら…ウフフ……。」 彼女の股は濡れていたのだ。 狂気を操る自分でさえ、師匠の持つ狂気にはかなわないだろう。 ガラスケースの中の、溶けたゆっくりれいむを見つめながら、うどんげはそんなことを思っていた。 今宵は新月、永楽亭の静かな夜は続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/ogasawara/pages/317.html
巨大な針が自分の頭を狙っている。 針の先が開いた。 そして閉じた。 頭に針が突き刺さるまで、三秒だった。 ――アシタスナオは、その三秒で死を覚悟することはなかった。 単純に、死という物を、それが目の前に迫っていると言うことを連想できなかった。 Fに成る。それは自ら望んだことだった。 その思いが、願いが。 この死に直面しているはずの状況から思考を曖昧な物にする。 ただ、ぼんやりと漠然と、不明瞭に、不鮮明に、模糊たる方向へと意識を滑らせていく。 (外交――出来なくなるかな) 藩国に残した面々の顔。 息苦しい...呼吸が出来ない。 (あれ、俺サイボーグだったっけ。じゃあ苦しくないか) すぐ傍にいるはずの玄霧の顔。「アシタクンガンバレ」とたぶん言っている。ハルとソート、サイボーグになりたいと呟いたときにいた。 (どうなるんだ、Fに成れるのか。成って、成ってどうするんだっけ。外交――) 今までに出会った、藩王と摂政の顔。猫もいれば――犬も。 これが走馬燈だと気づくのは三秒よりあとで、 ああ、俺って死にかけてるんだな... その事実を肌に感じたのは、もう少し後。 死に。たくないよなあ、やっぱり。 /*/ でもこれは...死んだかな。 /*/ スーツ姿の男が、止めた。針は刺さってない。 息が出来ない。 良く分からないなにかに包まれている状態は解けていたはずだった。 地面に転がり落ちていた。 口に砂利の味がした。葉っぱが湿って腐った様な臭いもする。 サイボーグなのだから息は必要ないと数瞬前の玄霧の声がした。 それでも苦しい。 皮膚という皮膚から汗を噴きだしていた。 喉と舌が、活きのいいナメクジみたいに意思と関係なくひくひくとしている。 口からだらしなく涎がたれて、喉を伝っている。 「ご協力感謝。」 どこからか、声が反響している。物凄く近くか遠いところからの声だった。 耳の裏側がうわんうわんとやかましい。 涎みたいな汁が耳の底に溜まっていると思った。 眩暈がする。迷宮の中だというのに、太陽を直視したように空が明るい。 吐き気がする。手足が痺れて動く様子もない...喉も痙攣して、声が出ない。 土は冷たかったが、湿っていたので服が濡れて不快だ。 いやだ、叫びたい、暴れたい、逃げ出したい。 心にゆとりが全くない。 たった数秒で精神を根こそぎ持って行かれた。 自分は、あのとき、死にかけていたのかもしれない。 「そもそもFがいっていることが本当とは思えない」 遠く/近くから声が聞こえているのに...その言葉の意味が理解できない。 本当――嘘、F、人間、端末、分解――針、死、Fになる、本当ではない。 Fに――なれない。 えー! と声を出したはずだった。 耳鳴りがうるさくて自分の声が聞こえない。 声だけを聞こうとすると、今度は心臓の音がうるさい。心臓が直接殴られているんじゃないかという程だった。サイボーグの自分に心臓などあったのだろうか... けれど、 「機械になりたかったのかい?」 その声だけは聞こえた。 声の意味も。 (そうだった) 機械に――なるんだった。 別に死ぬわけじゃない。 怯える必要なんて無い。 けど、死にかけた。 「うーむ、なんというか。彼の希望ですので」 誰かの声。 そうだ、それが希望。Fになる。 自分が機械になる。 それが目的。 なら、だから―― ――この手が震える理由なんて無いはずないのに。 握ろうとして、汗で指が滑る。 自分の声だけが、まだ聞こえない。 死に直面した。 喉に固まりが詰っているかのようだ。 心が脅迫されて、その恐怖がいまだに拭えない。 それでも、なにかを言ったはずだった。 強がるようなことを言ったはずだった。 けど、その人は自分の震える手を見ていた。 瞼に溜まった汗と涙を見ていた。 「...それがいい。きっと、生身の君に抱きしめてもらいたい人もいる」 その人の顔は、印象には残らない。 だけど、自分はその声を、声に込められた感情を一生忘れないだろう。 そう思えた。 「...わかりました。一度退いておきます」 自分は――まだ迷うべきだ。 じゃないと、きっと後悔してしまう。 死ぬことなんて、今更、怖くはない。 けれど、 今日俺は、覚悟もできないままに死にかけた。 別離れの言葉を、心の中でさえ呟けはしなかった。 ただぼんやりと、状況に流されて、そのまま機械へと... それがどういうことなのか、受け入れる心構えは自分にあったのだろうか。 覚悟も、迷いもないままに自分を終わらせようとしていた。 それは、とても恐ろしいことなのだ...ろう。たぶん。 その実感すらないことが、今は怖い。 俺は、 ――次にこの人に会えたときまでに、答えを出せるのだろうか。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元:玄霧@玄霧藩国様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=191;id=gaibu_ita 製作:はる@キノウツン藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=765;id= 引渡し日:2007/ counter: - yesterday: -
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6547.html
前ページ次ページ鋼の使い魔 丘の中腹にへばり付くように飛翔機は墜落している。斜面を茂る林の中、腹をこすりつけて落ちた機体は木々に挟まれ止まっていた。 身体を捻って機体と地面の隙間から、ギュスターヴは脱出する。片手には何とかデルフを掴んでいられた。 「流石に死ぬかと思ったな…」 「運が悪ければぺしゃんこだぜ?まったくよー」 悪態の尽きないデルフを腰に挿し林から出たギュスターヴに、丘の上から見下ろせる戦場の全景が入ってくる。 「…思ったより戦況が良くないな…」 トリステイン軍が北に位置し、アルビオン軍が南、背に村を負った形になっているのがギュスターヴには見えた。 (タルブを守る戦でタルブから切り離されてしまっている…よくないな) アルビオン軍はこのままタルブに入り込むことが出来てしまうのだ。それではいよいよトリステインに勝ち目がなくなってしまう。 …だが、アルビオンの軍勢はなぜか村に下がる事無く、トリステイン軍に向かって兵を進ませていた。指揮を執る者が居ない以上、目の前の敵に向かっていくしかないのであった。 「なんだあの軍団、指揮官が居ないのか…?」 ギュスターヴの目からすれば優勢であるはずのアルビオン軍が、まるで烏合の衆でしかないという一種の矛盾に、不可解な雑音のような感覚を受けた。 そのままじりっと戦場を眺めていると腰元の剣が騒ぐ。 「相棒、ぼやっと見物してないで嬢ちゃん探そうぜ」 「ん、そうだな…」 デルフに促されるまま、ギュスターヴは丘を降りた。降りた先は丁度、アルビオン軍の真後ろに当たった。 既に四方には累々たる屍が転がり、死臭が立ち込めている。美しい葡萄畑を湛えるタルブに似つかわしくない、死の世界だった。 「ルイズがもしタルブの戦場でアニマを集めるなら、こうして死体の転がる場所のはずだ…」 死した生物のアニマは肉体を離れて大地に還る。 仮に生物からアニマを吸い取るというのなら、生きている者より死に掛けている者の方が容易いだろう、という程度にはアニマの学問に対する知見がギュスターヴにもあった。 横たわる死体の中をギュスターヴは歩く。視線の遠くでは行進するアルビオンの兵隊が見えた。 「……」 自分一人戦場に突撃しようと、それは戦況になんら影響を与えないこと位、ギュスターヴも分かっている。だが、ギュスターヴの心情はトリステインに傾く。この国に、この国の人々の恩を受けたのだから、助力する術が何かあれば…とも思うし、国を動かしていたものだからこそ、国難をこの国の力で乗り越えて欲しいものだ、とも思った。 二つ心をどちらかに固められるほど、ギュスターヴは超然ではない。 「うぅ……」 傍の死体からうめき声が聞こえた。振り返ってその死体に駆け寄ると、アルビオンの傭兵であった。鎖帷子に固めた身体をずたずたに切られていたが、ほんのわずかだが息を残していた。 「あぁ…メイジの旦那……」 死に体の兵士は血を失った顔色で、ギュスターヴを見る。 「わりぃけど傷…埋めてくれねぇかい…?」 マントをつけていた姿を見て傭兵はメイジだと思ったのだろう。ギュスターヴは声をかけるべきか逡巡したが、言葉なく首を横に降った。 「けっ……なら一思いに…殺してくれ……苦しくてかなわねぇ……」 空ろにそう言って、傭兵は冷えた目でギュスターヴをじっと見る。戦場の喧騒を背に、ギュスターヴは少し迷ってから、デルフを抜く。 一呼吸置いて、兵士の喉笛を一突きに貫いた。 「っ!…!!………」 声なき叫びを上げた傭兵は、やがてその目から光を消して、ぐったりと斃れる。 「やりきれないねぇ」 「戦場だからな…」 寂寥とした気分を催す一人と一振りだった。 だが、そこに黒い一陣の風が吹き込んだ。ギュスターヴは埃から目を覆う。 「うっ…」 「ふふふ…あははは……ああ、だれか、誰かいないのかい?トリステインの兵士で生きているものは……」 風に乗って、誰かの嗤い声が聞こえてくるのだった。 「ああぁ…どうやら戦場で迷子になってしまったようだ…詰まらない……もっと僕はトリステインの兵士を殺さなくちゃいけないんだ…殺して、殺して、殺し尽くして、僕がトリステインを手に入れる。トリステインを手にして僕は、世界を…この世の真理を手にするんだ……ははははは…あぁ……」 聞き覚えのある声だった。しかしそれは以前にも増して狂気と死の匂いを深めている。抜剣したままのギュスターヴは声のする方に剣を向けた。 「んん?…あぁ、いるじゃないかぁ。まだ生きている兵士が…ふふはははは!」 声の主は血に濡れた身体で杖を振った。放つ真空の刃をギュスターヴはデルフで受け止めると声の主に向かって飛び掛る。 「おぉ?!」 声の主は曖昧だった風情から一転、杖を構えて振り下ろされるデルフを受け止めると、血走った目でギュスターヴを睨みつけた。 「何だ…?お、ま、えは…何故ここに居るんだ?…ガンダールヴ…」 「アルビオン以来…随分と様子が変わったな、ワルド…」 キリキリと杖と剣が鳴り、二人の視線がぶつかる。瞬間、ワルドは歯をガチガチと鳴らして力任せに杖を振り切ってギュスターヴを払い飛ばした。 「ガァンダァールヴぅぅぅぅ!」 「!!」 ギュスターヴは叩きつけていたデルフごと弾き飛ばされるが、どうにか踏みこらえて剣を構えた。 叫びを上げたワルドが皮手袋の左手で顔を引っかきながらぶつぶつとつぶやく。血に塗れた手で触れた顔に、屠った兵士の血で化粧がされていく。 「ガンダァァルヴゥゥ…何故お前が居るんだよぉ…えぇ?お前は、瓦礫の下敷きになったんじゃあ、ないのか?ん?……お前の役目はなぁ…俺の腕と引き換えに死ぬ事だったんだ」 徐々に狂気の波を高くするワルドの周囲に、黒い帯が広がるように風が渦巻く。風の帯は漆黒を深め、その戦端が布を広げるように『飛び掛った』 「駄目じゃあないかぁ!役目を終えた配役はぁ!」 飛び掛る黒い帯は鋭い『爪』を振りかざし、ギュスターヴに叩き付ける。 「っ?!『ディフレクト』!」 未知の魔法にギュスターヴは咄嗟の防御技で打ち払った。黒い帯は払われるとそのまま掻き消えた。 「がぁぁぁぁぁぁぁ!」 「っ?!」 咆哮に振り向けば、驚く事にワルド自身が猿(ましら)のようにギュスターヴ目掛けて飛びかかろうとしていたのだ。 「だぁ!」 ワルドは振りかぶっていた左腕をギュスターヴに叩き付けた。それを受けたデルフから、硬い金属同士を叩き合わせた甲高い音が響く。 「死んでなきゃあ可笑しいだろうがぁぁぁぁぁ!」 (お、重い…!) 叩きつけるワルドの左拳はギュスターヴの知る中でも一、二を争う重さを持っていた。しかもそれは剣に正面から叩きつけても傷をまったく負わない怪異なる拳だった。 「らぁ!」 「!!」 拳に目を奪われていたギュスターヴだが、さらにワルドが右手の杖を横なぎに叩きつけようとしていた。ギュスターヴはさっと後ろに飛んでこれをかわすと、再び剣をワルドに向けた。 「相棒!どうするんだよこいつ?!」 「知るか!だが分かるのは、こいつをどうにかしないとルイズを探しにいけないってことだ」 瞬間、ギュスターヴは思考からルイズを追いやって目の前のワルドに集中した。 (気を散らせては負ける…今のワルドは以前とは比べ物にならない危険を秘めている…) 睨み付けるギュスターヴに、ワルドは杖を縦横に振って再び黒い風を束ねていた。 「はははははは!…殺してやる、殺してやるぞ、ガンダールヴ!今度こそ俺の手で、お前を殺してやるぞ!」 『タルブ戦役・七―再戦、狂気のワルド―』 ワルドの血に染まった軍杖が、楽団の指揮棒のように軽く振るわれた。 たったそれだけで、跳ね上げるどす黒い風が空飛刃【エア・カッター】となって飛び掛る。 「『剣風閃』!」 デルフを目にも止まらぬ速さで振り抜くギュスターヴ。払われた剣戟が風を伝って迫る刃をかき消した。 だが、霧散する風の背後から、杖先が吶喊する槍先のように伸びてギュスターヴの脳天を目指して迫った。 「『ディフレクト』!」 空かさず防御技を降るい、杖先はデルフに遮られて止まった。杖を握るワルドの姿は、ない。 ワルドは真空鋲【エア・ニードル】を纏った杖を投げつけたのだ。 「ハァっ!」 「っ!?」 自分の背後から迫る影と気配にギュスターヴの体は反射的に右方向へと逃げる。一瞥すれば一拍前まで自分の居た場所に、ワルドは左手で握った短い杖に作った真空鋲を地面に突き刺していた。 「ふはははは……どうしたぁ?ガンダールヴゥ…手も足もぉ…出ないかね…?」 距離をとって立つギュスターヴに向かって、投げつけた杖を拾いながらワルドが喋る。 「あぁ、参ったね。偏在【ユビキタス】を使わぬとは恐れ入ったよ」 軽口を吐きながらも、ギュスターヴは内心焦りも感じていた。以前のワルドは優秀な戦士ではあったが、もっとスマートな戦闘を行うタイプだった。教科書的な、正統な訓練を積んだ、詭計のない…。 (今のワルドはまるで獣(けだもの)だ…動きが読みづらい。それでいて以前と同じか、それ以上に速い…) 一瞬で立ち位置を変える、まさに『閃光』の速さであった。 にやにやと嗤うワルドが、短杖をしまって軍杖を振るう。雷雲のような黒い雲気を撒き散らしながら、狂気の男は語るのだった。 「偏在など所詮人の業だ…そうだろう?トリステインを戴く僕が使うべき、始祖の真理を得る資格のある者が使うべき、魔法の御業があるのだよぉ、えぇ?…分かるまい。ただ剣を振るうしか能のないお前にはなぁ」 かくかくと身体を揺らして、ワルドは嗤う。 「どうやら片輪になって頭が壊れたらしいな。…お前のような狂人には何も出来やしない」 話しながらギュスターヴも、じりじりとワルドとの間合いを詰めようとしていた。ワルドはどろりとした目で片手に握る軍杖を縦横に振った。 「切って捨てる…か…?」 おどけ芸人のように、ワルドはゆらゆらと身体を振るった。振りまく雲気が濃く、深く……ワルドとギュスターヴを包み込んでいく。 「なら切ってみろ…突いてみろ…お前のたった一つの刃で…」 徐々に視界は、ただ黒い霧の中へと落ち込んでいった。根深い、まるで闇のような霧だ。三歩先も見えやしない、血と殺意を染み込ませた邪な心でその場が満たされた。たった一人の手によって。 「………」 一滴の冷や汗を背に、ギュスターヴは半歩下がった。だが、あくまでもデルフの切っ先はワルドを向いて鋭く輝いた。 ワルドは杖を振り上げて仰ぐような姿勢で固まる。 「狗のぉ…餌になって…死ねェ!」 一陣、突風がギュスターヴに吹き付けられる。わずかに視界を遮られたギュスターヴが再び正面を見た時、視界全域はワルドの生んだ黒い霧の中だった。 (まずい!) ギュスターヴが危機を感じた際に、地面を踏み切る音と風を切る音が聞こえた。 「ッシャアァ!」 『ディフレクト』を仕掛けることも出来なかった。暗い霧の中から飛び出た『何か』がギュスターヴの腕を薙ぎ、また霧の中に戻っていく。 「っ!…」 「相棒?!」 「いや、大丈夫…。布を持ってかれただけだ」 腕自体はかすり傷を残しただけだったが、その上の革布が千切り取ったように破けていた。 安堵したのも束の間、再び風切り音と共に霧の中から『何か』が飛び出してギュスターヴに迫る。 「…『ディフレクト』!」 硬い金属音が響いて『何か』を弾き返した。 「…くくく……おぉしかったなぁ?ガンダールヴ」 霧の中よりワルドの声がまるで四方八方より聞こえるような錯覚を起こさせる。 (気後れするな…気後れなど…) こんなところで足止めを食っている場合ではないのだ。ルイズを見つけなければならないのだから。 呼吸を整え、構えを変える。左手のルーンに光が篭り、霧の奥を駆ける足音と呼吸音が鮮明に聞こえた。 ワルドの踏み切り音を聞いて、ギュスターヴは聞こえる方向に向かってデルフを打ち込んだ。 「『払い抜け』!」 飛び込んだ先で、霧の中で鮮明に見えない人影とすれ違う。その刹那、左の頬を冷たい『何か』が掠め、剣先にも金属を切りつける感触が伝わった。 「んー。惜しかった…今のはとても、惜しかったぞ…」 着地して振り返ると置き土産のようにワルドの声が聞こえた。手ごたえはあったが、負傷は与えられなかったようだ。 ワルドの次の攻撃、特に背後を警戒しながら、ギュスターヴは問いかけた。 「…デルフ。生きてるか」 「…生きてるぜー。っていうか生きてるのか俺様?ま、いいや…で、なんだいこんな時に」 「さっき切りつけた時、何か判ったか」 「当たったのは左腕だ。でも前みてーにスパッと行けなかったぜ。わりぃ」 話している中、再度霧の中から『何か』が飛んでくる。それを今度は横飛びに避ける。 「…気にするな。防具の類じゃなさそうだな」 「おつむも普通じゃなくなってるしなー」 遠くから兵士達の喧騒が聞こえる中、一人と一太刀は変わり果てた男の嘆きを聞いた。 「あぁ!残念だガンダールヴ…やっとお前と戦えたのに。今の僕とお前じゃ話にならないじゃないか」 「好き勝手な事を言う…」 飽いた玩具を投げ棄てるように、ワルドから芝居がかった嘆きの声が聞こえてくる。 「もういい!残念だ。残念でならないよ!お前を豚の挽肉のようにバラバラにしてこの倦んだ気分を雪ぎたいんだ!だからさっさと死ぬんだ。抵抗できず、恥知らずに喚いて死んでみせろ」 霧の奥から聞こえる音がギュスターヴに飛び掛ろうと迫り来る。ギュスターヴは自身の間合いにやってくる、拳大の『何か』をじっくりと見た。集中する意識が時間を引き延ばしていく…。 (霧の中から飛び掛る物体…踏み込んでも切り倒せず…素早く逃げられる…) 平手に伸びきった左手が、ゆっくりとギュスターヴの頭を狙って飛んでくる。 (切る…たった一つの剣で…一つ…一方から…) 引き伸ばされた意識の中が、ワルドの攻撃の正体を発見させ、ギュスターヴの脳裏に煌く。 その時、電撃が身体を駆け巡った。 瞬間、ギュスターヴは身体をよじってワルドの『どこからか飛び出した』左手を避ける。 「…デルフ」 「あによ」 柄を握り直し、ギュスターヴは笑った。 「閃いた。あの逝かれた若造を…殺る。壊れずにいろ」 「ちょーっと自信が無いけど、いいぜ」 不可思議であった。屍の転がる場所で、狂人と戦っているのに。 ギュスターヴは何故か晴れやかに笑ったのだ。 霧の中で対峙していたワルドは自身の生み出した死角越しに、澱みきった目でそれをまざまざと見た。そして相に浮かべる狂気の無表情をぐずぐずと崩す。ぎりぎりと歯を鳴らし、眉を震わせると…大きな声で叫んだ。 「あぁぁぁぁああぁああぁあぁああぁあぁアアァアアアァアアアァアアァァァァァ!!!!」 「わ?!なんだ??」 デルフが突然の叫びに驚く。だがギュスターヴは逆に冷静な目で声のする方に構えなおす。 「ふっざけるなよガンダールブなぜ嗤うんだお前は今から殺されるんだ僕の手で魔法に負けて体中を切り刻まれて狗でも食わぬゴミに変わるんだそうだあの目立つ鎧が気に食わないなんだあればお前のような狗が身に着けるに値しない過分なものだそうだろうなんだなぜ嗤う僕を嗤うのか?僕の何処を嗤う僕はこれからトリステインを手に入れて世界を手に入れるんだお前が嗤える筈がないんだお前がおまえがオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガオマエガァ!!」 ぶつぶつとつぶやき、激昂に叫ぶワルド。 ギュスターヴはそれを見て、さらに笑う。何処までも晴れやかに。 「ワルド。お前も笑ってみせろ。目の前をよく見てな」 「ガァァァァァァンダァァァァルヴゥゥゥゥ!!!」 極まるワルドの狂気が風に乗って集まる。黒い、余りにどす黒い意思が風の魔法に込められて渦巻いていた。 「デルフ。まずは…あいつを捕まえるぞ」 「おう、ばっちりやんな」 霧が風に乗って吹き付けてくる。視界を取られ、姿勢を崩されるような強烈な風。 その強烈な風を縫うようにワルドの左拳がギュスターヴの左胸に突き刺さった。 「ぐっ!…ぅ…」 鋼の鎧を変形させて肋骨に食い込んだ拳を、意識が一瞬飛びかけたギュスターヴは右手で抜けないように押さえつけた。 「鎧を着けていて…助かったな…」 食い込んだ拳の、手首から先を手繰り寄せた。細い鎖が霧の先まで伸びているのが分かった。 ギュスターヴはそれを、一気に手元まで引っ張った。 「うぉぉぉ!」 引き寄せるワルドの体目掛けて、デルフの切っ先を突き出す。 引き寄せられたワルドは右手の杖を逆手に握り、魔法で黒い霧を生み出していたが、力任せに引き寄せられた姿勢で杖を叩きつけようと振りかぶった。 兵隊服と鎖帷子を絶つ感触と、肩を何か硬いものが突き刺さっていく感覚を覚えて、ギュスターヴの視界から濃霧の遮りが消えた。 「この…使い魔…無勢がぁ…!」 呻くワルドが今、はっきりとギュスターヴの視界には映っていた。 以前断ち切ったはずの左腕、それを細工仕込みの義手に変えたワルドの手管も、腹に深々とデルフが食い込んだ今、使うことは出来なかった。 暴れ紛れにワルドはデルフを腹から抜き、間合いを取って構えた。 「……まだ、やるかい?」 ギュスターヴもまた深手を受けた。鎧越しに胸を打たれたし、肩には今も杖先が刺さっている。 しかし血を多く流しているはずのワルドは短杖を抜き、真空鋲を纏わせてこちらを睨む。 死闘まだ終わらず。ギュスターヴも肩に刺さる物を抜き棄て、構える。 にらみ合う二人の間がじり、じりっ、と詰る。集中する意識が視界を陽炎のように歪ませる。ただ、ギュスターヴの鎧の擦れ音とワルドの杖先を渦巻く風の音が、互いの耳に聞こえていた。 数呼吸、先に動いた狂人がまさに『閃光』の二つ名に相応しいスピードで、ギュスターヴの額を貫いた。 手に残る感触が、軽い。目の前のギュスターヴが消えた。 「…ぁ?」 ワルドは背中に違和感を感じた。何か硬いものが押し付けられるような感覚に振り返ると、霧散するギュスターヴの残像を見る。 「な、に…っ?!」 さらに違和感、今度は左脛を何かが打ち付ける。さらに右肩、右腰、右脛、左脇腹… 「ぇ…ぁ…?」 それは徐々に違和感では無く、痛覚となってワルドに認識された。幾何級数的に増え続けてワルドの全身を覆う。 周囲を囲むギュスターヴの残像が同時複数的に切りつけることによる不可避の攻撃だった。残像が全体ではなく、たった一人に向けて無数の方向より攻撃することに遣われたのだ。 残像がワルドを切り続ける中で、実体のギュスターヴが大上段にデルフを構えて飛び込む。 「『全方位剣』(マルチウェイ)!」 右肩から縦に身体を割る一刀両断の一撃がワルドに滑り込んだ。デルフリンガーの耀く剣先が皮を裂き、肉を切り、肺腑まで達してようやく、その勢いを止めた。 血の花が大地に咲き乱れる。鋼の大帝の髪も、肌も、鎧も、男の血飛沫を逃れられなかった。 「っが!…あぁっ…はぁっ……」 膨らまない肺腑が呼吸を奪いながら、常人ならショックで絶命する一撃を、ワルドの意識は偶然にも、その脳裏にこびりついて残っていた。 剣を自分に振込み、肩で息をする血染めの『使い魔』を見て、クロムウェルから貰い受けた左腕を突き出し、喉輪に手をかけた。 「ぐっ…」 ギリギリと締め付けてやると顔を顰めるギュスターヴ。それを見て、ワルドは嗤った。 「ククク…殺して…やるぞ…ガンダールヴ」 最早ワルドには己が死につつある事すら、分からなくなっているのだった。何故苦しいのか、なぜ戦場にいるのか、なぜ戦っていたのか。ただ、戦っていればかつて、自分が欲したものを手に入れられるのだと、漠然と思っていたから。 銀の指先が頸の肉に食い込んでいくが、徐々にワルドの息も細くなっていく。 「お前を殺し…て…トリステインを…」 そこまで言って、ワルドの表情にわずかにだが、理性の光が蘇ったように、ギュスターヴは思った。 「…ズ…みに……くの……」 二、三語繰り返し、最期に知らぬ女性の名前をつぶやくと、デルフで身体を割られ、ギュスターヴに指を食い込ませた男は、険しい表情のまま、逝った。 デルフを引き抜き、指を外す。ワルドの身体が人形のように固まったまま地面に倒れた。 「……若造が才走りやがって」 「やりきれねぇな…相棒」 肩で息を整えながら、斃れたワルドの開ききった目を、じっと見た。 「死に際に、微笑まぬ者は…」 「ん?どうした、相棒」 「……いや」 デルフを拭いて鞘に収め、ギュスターヴはその場を後にする。その目には言いがたい、戦士の悲しみが滲んだ。 ギュスターヴはデルフと共に東の丘を目指して歩く。西の丘から見た戦場が今、どうなってるのか、既に分からなくなっていた。見えるのはアルビオンの兵隊の後姿ばかりだからだ。 さらにギュスターヴ自身、疲労に身体の自由を取られていた。膝が笑い、息が上がる。 「無駄に時間と体力を使ってしまったな…」 「加えて相棒、『ガンダールブ』の力、あんまり使えてなかったしな」 話しながらも周囲を見渡す。遠くから喧騒、そして砲撃音が聞こえる。 「本来ガンダールヴは主人の盾なんだ。主人の危機に対してガンダールヴの力が発揮される。さっきみてーに手前一人のピンチじゃ殆ど、ガンダールヴの力はでねぇから」 「つまり年相応の体力とパワーしか出せてなかったってことか…」 「おう。ま、相棒もともと剣の達人みたいだし、あんまり大事にならねーですんだけど、体力の方はどうにもなんねーな。相棒、いい年だし」 「一言多いんだよ…」 話しながらギュスターヴは東の丘の中腹に立ち、改めて戦場を鳥瞰した。上を向けば船が漂い、下に向けて砲を撃っている。地面はそのせいか、炎の壁があちこちに立ち上がっているように見えた。 「このままだとトリステインが負けるぞ…」 「でもお嬢ちゃんも見つかんねーしなぁ……おおぅ?」 「どうした、デルフ」 カタカタとデルフが騒ぐ。 「なんか、ものすげーよくないものがくる…感じがする」 「良くない物?………っ?」 デルフが鳴る、というより震えているのを抑えると、急に視界が暗くなるのに気付く。 空浮かぶ船の間から空を見ると、厚い雲が掛かり始めているのだとわかった。 「雨…か?良くない物って」 「いや、ちげー。もっと上からくる」 「もっと、上…??」 曇天が雷雲のように呻り、タルブ北面街道が震えた。木板を引き裂くような轟音が劈くほどに鳴り響くに至って眼下の戦場でも、にらみ合う両軍が異変を察知して俄に矛を止め始めた。 ギュスターヴは切れ間に見える天上の暗さに、ふと変貌したルイズが携えていた怪しげな卵を脳裏に蘇らせていた。 経年が養った直感が、この空をルイズと結び付けさせた。 「………来るぜ」 「何?」 両軍が立ち止まっても尚、空は割れんばかりに鳴り響いて止まない。さらに曇天は濃くなり太陽の光は薄く、暗く……。 そして。天上の雲を切り裂いて落ちる一筋の光が、不吉な戦場の真上に零れた…と思った瞬間。 光が空に浮くアルビオン軍艦の一つを貫いた。 爆音、熱波、閃光が高度約400メイル上空から戦場全域に向かって放射した。戦場に居る者はギュスターヴを含め、知らぬ間に悉く目を覆い身を屈めさせるほどの音と光と熱が、一瞬であらゆる者に叩きつけられた。 「「「っ?!」」」 そして目を見開いた時、ギュスターヴの視界には火達磨になった船が地面に落ちようとする姿があった。 前ページ次ページ鋼の使い魔
https://w.atwiki.jp/2023/pages/80.html
参加メンバー レン/GUMPEST 化蟹漁師ミリー 鉱石人 事件の経緯 (part102)にて発生。 突如街に現れたきるどーるのメカ「カブトブジン」! 3人の狙いはGUMPEST V2のデータだった! 着ぐるみ電波で人々にオスのカブトムシ着ぐるみを着せていくメカ。 ミリーとキンバリーも例外なく着せられ、行動を制限される… さらには物理攻撃のバリアによりミリーの銛も防がれてしまう。 そこへ駆けつけたGUMPEST V2!突進を決めて登場した! が、電波の範囲内だったのでカブトムシ着ぐるみを着せられました。 遠距離バリアも近接攻撃バリアもあるカブトブジンに苦戦する3人… さらに3人がGUMPEST V2のデータを読み取っていたため奥の手も使いかねていた… しかし「バリアの切り替え」という弱点を見つけた3人はタイミングを合わせて大技を繰り出す! その結果ミリーの銛が突き刺さり自爆装置が作動、ロボは爆発してきるどーるは星になったとさ… + めでたしめでたし…? …だがしかし、きるどーるはGUMPEST V2の名前と戦闘データを持ち帰っていた。 目的は果たされてしまったのだ… + おまけ 描写されていないが、 魔法少女ビーストこと古手取 妙子もカブトムシ着ぐるみを着せられており、 街路樹の樹液をめっちゃ舐めていたらしい。 きるどーる一行が自爆したときの轟音で危機を察知し、その際に正気に戻り自分が何してたかを知り赤面して逃げ帰ったそうな。
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/1373.html
Side K- 綺麗で強くて小悪魔で。私にないモノいっぱい持ってるじゃん。 のっちの言葉が頭に響く。 のっちだけは違うと信じてた。 あたしの本質を見抜いた上で好きになってくれたんだと、 ……信じたかった。 あたしは綺麗じゃない、 あたしは強くない、 あたしにないモノいっぱい持ってるのはのっちでしょ? K『な〜んてね。』 N『?』 K『合コンなんか行かないよ?』 N『ゆかちゃんっ。』 心底嬉しそうな顔。 K『意地悪言ってみたかっただけ。』 N『もうっ、洒落になんないって。』 うん、洒落で言ったつもりないし。 思いのほか、のっちの言葉が胸に突き刺さって抜けないトゲになってる。 チクチク痛むそれを抱えながら笑顔で向き合うなんて訳ないよ。 でもね。 のっちにとっては些細なトゲでも、 長年かけて石をうがつ雨垂れのように、確実にあたしの心はえぐられていく。 それによる変化にのっちが気付かないほど鈍いとはあたしには思えない。 携帯の画面に映し出される文字に少し胸がホッとする。 あたしは独りじゃない。 あたしと同じような想いをしてる人が他にもいる。 皮肉にもその安堵感は、 最愛の人であればある程得られないもので。 K『もう、こんな時間だし今日は帰るね。』 N『え?帰っちゃうの?』 泊まる事が当たり前のようになってるこのぬるい空気が、肌にべったり絡み着いてあたしを不快にさせる。 K『明日早いしね。』 優しい口づけを落とせば、彼女は言う事を聞く。 そんな従順なとこも愛しくて苛立ちを覚える。 一刻も早く帰ってシャワーを浴び、肌に絡み付く惰性を洗い流してさっぱりしたかった。 (続く)